12歳の焦燥と孤独 『金木犀とメテオラ』 安壇美緒
『金木犀とメテオラ』 安壇美緒
北海道に新設された、中高一貫の女子校が舞台。
ふたりの女の子の視点から描かれる、12歳と17歳の焦り、不安、焦燥。
大人でもない・・・ 子供でもない。
自分にも確かにあった「その頃」の感情が、ほろ苦く思い起こさせられるような小説でした。
過ぎ去ってしまった遠い昔に思いを馳せながら、50代の今、昔の自分を慈しむような気持で読める本だと思います。
主人公のひとり、宮田佳乃。
裕福な家庭に育つも、母親を亡くし、折り合いの良くない父親とふたり暮らし。
全国コンクールで入賞するピアノの腕前を持ち、成績優秀。都内でも指折りの中学へ進学するはずが、父親が勝手に決めた、北海道の中高一貫校へ行くことに・・・
根強い鬱屈、常に1番であることへの執着から逃れられない女の子。
そしてもうひとりの主人公、奥沢叶。
入学生総代をつとめた特待生で、容姿端麗、成績優秀、人当たりも良く、誰からも一目置かれる女の子。
地元で母親とふたり暮らしだが、そこには学校の友人達にはけっして知られたくない家庭の事情が・・・
母と住む狭いアパートから、いつかは出て行きたいと思っている・・・
北海道の大自然の中、世間と隔離された中高一貫校で繰り広げられる日常で、成績トップを争う宮田と奥沢。
傍から見たら、羨ましく思えるものを持っているふたりの女の子。
でも、本人たちの抱える苦悩は誰にもわからない・・・
孤独で辛くて怖いのは、この世で自分だけだと思っていた。
中学生、高校生の頃、こんな感情を持ったことがある人は多いのではないでしょうか。
遠い昔の自分に会いに行ったような気持になった本です。
おすすめです(*´▽`*)