感動の長編ミステリー 『ノースライト』 横山秀夫
横山秀夫さんの作品を読むのは久しぶりになります。
一番最初に読んだのは『半落ち』でした。
ここでがっつりと心をつかまれ、以来、大ファンです。
その後、『クライマーズ・ハイ』、『64(ロクヨン)』など、期待を裏切らない、読み応えのある作品ばかり。
警察ものが多い作品のなかで、この『ノースライト』は建築家の小説でした。警察も検事も出てこないし、殺人事件も起きない。
バブル崩壊を機に、壊れた人間関係、登場人物それぞれの人生をからめて、たくさんの謎が繰り広げられていきます。
主人公「青瀬稔(あおせみのる)」は一級建築士。
「すべてお任せします。あなた自身が住みたい家を建てて下さい」という依頼を受け、
信濃追分の地に、自分のすべてを注ぎ込んだY邸を建築した。
出来上がったY邸は、建築雑誌にも取り上げられるほどの高い評価を得、施主も大満足での引き渡しとなったのだが・・・
その後、引き渡しから現在に至るまで、誰も住んでいる形跡がない。
引っ越してきた痕跡すらないのだ。
元の住家はすでに引き払われており、電話も通じない。
一家は忽然と姿を消してしまった・・・
何もない新築の家に、たったひとつ、2階の浅間山を望む部屋に、ぽつんと置かれた古ぼけた椅子。この椅子は、一家消失と何か関係があるのか?
謎の一家失踪。
そしてぽつんと残された一脚の椅子。
さらに、事務所の命運をかけたコンペも、この小説の大きな柱となっていて、まさに息のつまるような緊迫感。
もう一度、読み返したくなる作品でした。