『昨夜のカレー、明日のパン』 寒い日に、ほっと温まる本
『昨夜のカレー、明日のパン』 木皿 泉
図書館でふと目に入ると、ふわっと懐かしいような苦しいような気持になって手にしてしまう本。
もう借りるのは何度目になるのか・・・(^-^;
本の題名も、表紙のイラストも大好き。
初版が2013年4月になっているので、最初に読んだのはもう7年前位ということか・・・
25歳の若さで亡くなってしまった「一樹」。
一樹の妻の「テツコ」、そして一樹の父でありテツコの義父である「ギフ」。
一樹が亡くなった後も、庭に大きな銀杏の樹のある家で、ふたりがたわいもない話をし、丁寧に暮らしていく様子。
ふたりを取り巻く様々な人の人生、悩み、苦しみ、強さ、弱さ。
自分も、そして自分のまわりにいる人も、それぞれに色々な悩みや苦しみ、楽しいこと、嬉しい事を受け入れてここにいる。
生きて行くって、暮らしていくって、こういう事なんだな~と思わせてくれる本です。
全部で8つの章からなっている物語です。
1つ目の題は「ムムム」
「ムムム」は庭先で両足を踏ん張って空を見上げていた。両手の指で拳銃の形をつくると、それを高く突き上げ「バーン」と小さく叫んだ。
という書き出しで始まります。
なんだ? この「ムムム」って?
実はこの「ムムム」。
テツコとギフの隣の家に住む、一樹のおさななじみ。
客室乗務員をしていたのだが、笑うことが出来なくなって退職したのだった。
そんな「ムムム」の同級生たち、「テツコ」の知り合いの山ガール、一樹のいとこの虎尾。
テツコの恋人の岩井さんも、一樹の母の夕子さんも・・・
それぞれに悩みや苦しみを抱えながらも、ふだんは表に出すこともなく、たんたんと生きている。
読み進めて行く中で、登場人物が繋がっていき、それぞれの人に親しみを感じてページをめくる手が止まらなくなります。
登場人物みんなの、幸せを祈りたくなるような、そんな気持ちにしてくれる作品です。
Amazon内容紹介
悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ―。七年前、二十五才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。結婚からたった二年で遺されてしまった嫁テツコと、一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフは、まわりの人々とともにゆるゆると彼の死を受け入れていく。なにげない日々の中にちりばめられた、「コトバ」の力がじんわり心にしみてくる人気脚本家がはじめて綴った連作長編小説。