『避難所』 垣谷美雨 著 読みました。
『避難所』 垣谷美雨
東日本大震災をテーマにした小説です。
大きな地震のあと、巨大な津波に襲われ、九死に一生を得た3人の女性。
無職の夫と別れられない50代の福子。
離婚して、母と息子と暮らす40代の渚。
夫と乳飲み子、舅姑と暮らしていた20代の遠乃。
やっとの思いでたどり着いた避難所での生活は、信じられないくらい劣悪なものでした。
プライバシー確保のために用意されていた段ボールの仕切りがあるのに、使わせてもらえない。
理由は、
「自分たちは家族同然で、これから協力して生活していかなけらばならない。互いに親睦を深め、連帯感を強めて乗り切っていくため。」 なのだとか。
自治を任された年長の男性リーダーは、避難所の生活を改善しようと意見をする人に対して、「和を乱すな」、「イヤなら出て行ってもらう」などと脅すのです。
乳飲み子を抱えた遠乃は、好奇の目にさらされ、あやうくレイプまでされそうになります。そして、リーダーのレイプを容認するような発言まで。
ようやく仮設住宅に移ってからも、仕事もなく、精神的にも苦しい日々が続きます。
あの未曽有の災害で、心身共に極限まで疲れ果て、大事な家族が見つからないまま、こんな過酷な生活を強いられていたのかと・・・
実は、この話。
東日本大震災の際、最後まで、ダンボールの仕切りを使わせなかった避難所が実際にあったそうです。
3.11の日。
関東地方も大きな揺れに襲われました。
普段の何倍もの時間をかけて、ようやく家に着き、TVで見た津波の映像にどうすることも出来ずにいたあの日。
本を読みながら、苦しい思いでいっぱいでした。
どこかで災害が発生するたびに、TVで避難所の様子が映されます。
たいがいが学校の体育館などです。
日本は自然災害の多い国なんだと、最近改めて思うようになりました。
自分だって、いつ被災するかわかりません。
絆だ、ひとつになろう・・・
と言われても、やっぱりプライバシーを守る空間は絶対必要です。
これから、災害対策の一環として、避難所の在り方も考えていくべきだと強く思いました。
Amazon 内容
九死に一生を得た福子は津波から助けた少年と、乳飲み子を抱えた遠乃は舅や義兄と、息子とはぐれたシングルマザーの渚は一人、避難所へ向かった。だがそこは、“絆”を盾に段ボールの仕切りも使わせない監視社会。男尊女卑が蔓延り、美しい遠乃は好奇の目の中、授乳もままならなかった。やがて虐げられた女たちは静かに怒り、立ち上がる。憤りで読む手が止まらぬ衝撃の震災小説。